
春のお彼岸を迎えるにあたって
三月に入り、少しずつ春の気配を感じる季節となりました。
やわらかな陽ざしの中に、自然の息吹が静かによみがえってくる頃でございます。
昼と夜の長さがほぼ同じになるこの時期、日本では古くから「お彼岸」として、ご先祖さまに思いを向ける大切な節目とされてまいりました。
仏教では、私たちが生きているこの世界を「此岸(しがん)」、
そして迷いを超えた安らぎと悟りの世界を「彼岸(ひがん)」と申します。
春分の日には、太陽が真東から昇り、真西へと沈みます。
西方には阿弥陀如来の極楽浄土があると信じられてきたことから、人々はこの時期、西の彼方の彼岸へと思いを馳せ、ご先祖さまを供養してきました。
また春分の日は、「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」として、国民の祝日に関する法律にも定められております。
自然の恵みに感謝し、命のつながりに思いを寄せる。
この心は、まさにお彼岸の精神とも深く通じるものと言えるでしょう。
お彼岸の供養は、決して難しいものではありません。
お墓参りに行くことが叶わなくても、
お仏壇の前で静かに手を合わせること、
あるいは亡き方の面影を思い出し、感謝の心を届けること。
そのひとときこそが、何より尊い供養となります。
そしてお彼岸は、ご先祖さまのためだけの行事ではなく、
今を生きる私たち自身の心を見つめ直す機会でもあります。
日々の忙しさの中で、少しだけ歩みを緩め、
「いま自分はどのような心で生きているだろうか」
と静かに問いかけてみる。
そのひとときが、心を整え、新しい春を迎える力となることでしょう。
弘法寺でも春彼岸のご供養をお勤めいたします。
どうぞお気軽にお参りください。
皆さまが穏やかな春を迎えられますことを、心よりお祈り申し上げます。
合掌
令和8年3月15日
大本山 弘法寺
住職 上田昭憲


